特許法 第九章 特許協力条約に基づく国際出願に係る特例 その1(特184の3~184の8)

第百八十四条の三(国際出願による特許出願)

1
千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約(以下この章において「条約」という。)第十一条(1)若しくは(2)(b)又は第十四条(2)の規定に基づく国際出願日が認められた国際出願であつて、条約第四条(1)(ii)の指定国に日本国を含むもの(特許出願に係るものに限る。)は、その国際出願日にされた特許出願とみなす。

2
前項の規定により特許出願とみなされた国際出願(以下「国際特許出願」という。)については、第四十三条(第四十三条の二第三項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。


第百八十四条の四(外国語でされた国際特許出願の翻訳文)

1
外国語でされた国際特許出願(以下「外国語特許出願」という。)の出願人は、条約第二条(xi)の優先日(以下「優先日」という。)から二年六月(以下「国内書面提出期間」という。)以内に、前条第一項に規定する国際出願日(以下「国際出願日」という。)における条約第三条(2)に規定する明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。以下この条において同じ。)及び要約の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。

ただし、国内書面提出期間の満了前二月から満了の日までの間に次条第一項に規定する書面を提出した外国語特許出願(当該書面の提出の日以前に当該翻訳文を提出したものを除く。)にあつては、当該書面の提出の日から二月(以下「翻訳文提出特例期間」という。)以内に、当該翻訳文を提出することができる。

2
前項の場合において、外国語特許出願の出願人が条約第十九条(1)の規定に基づく補正をしたときは、同項に規定する請求の範囲の翻訳文に代えて、当該補正後の請求の範囲の翻訳文を提出することができる。

3
国内書面提出期間(第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間。以下この条において同じ。)内に第一項に規定する明細書の翻訳文及び前二項に規定する請求の範囲の翻訳文(以下「明細書等翻訳文」という。)の提出がなかつたときは、その国際特許出願は、取り下げられたものとみなす。

4
前項の規定により取り下げられたものとみなされた国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に当該明細書等翻訳文を提出することができなかつたことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなつた日から二月以内で国内書面提出期間の経過後一年以内に限り、明細書等翻訳文並びに第一項に規定する図面及び要約の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

5
前項の規定により提出された翻訳文は、国内書面提出期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

6
第一項に規定する請求の範囲の翻訳文を提出した出願人は、条約第十九条(1)の規定に基づく補正をしたときは、国内書面提出期間が満了する時(国内書面提出期間内に出願人が出願審査の請求をするときは、その請求の時。以下「国内処理基準時」という。)の属する日までに限り、当該補正後の請求の範囲の日本語による翻訳文を更に提出することができる。

7
第百八十四条の七第三項本文の規定は、第二項又は前項に規定する翻訳文が提出されなかつた場合に準用する。


第百八十四条の五(書面の提出及び補正命令)

1
国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に、次に掲げる事項を記載した書面を特許庁長官に提出しなければならない。

1
出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
2
発明者の氏名及び住所又は居所
3
国際出願番号その他の経済産業省令で定める事項

2
特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。

1
前項の規定により提出すべき書面を、国内書面提出期間内に提出しないとき。
2
前項の規定による手続が第七条第一項から第三項まで又は第九条の規定に違反しているとき。
3
前項の規定による手続が経済産業省令で定める方式に違反しているとき。
4
前条第一項の規定により提出すべき要約の翻訳文を、国内書面提出期間(前条第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間)内に提出しないとき。
5
第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を国内書面提出期間内に納付しないとき。

3
特許庁長官は、前項の規定により手続の補正をすべきことを命じた者が同項の規定により指定した期間内にその補正をしないときは、当該国際特許出願を却下することができる。


第百八十四条の六(国際出願に係る願書、明細書等の効力等)

1
国際特許出願に係る国際出願日における願書は、第三十六条第一項の規定により提出した願書とみなす。

2
日本語でされた国際特許出願(以下「日本語特許出願」という。)に係る国際出願日における明細書及び外国語特許出願に係る国際出願日における明細書の翻訳文は第三十六条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書と、日本語特許出願に係る国際出願日における請求の範囲及び外国語特許出願に係る国際出願日における請求の範囲の翻訳文は同項の規定により願書に添付して提出した特許請求の範囲と、日本語特許出願に係る国際出願日における図面並びに外国語特許出願に係る国際出願日における図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文は同項の規定により願書に添付して提出した図面と、日本語特許出願に係る要約及び外国語特許出願に係る要約の翻訳文は同項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。

3
第百八十四条の四第二項又は第六項の規定により条約第十九条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合は、前項の規定にかかわらず、当該補正後の請求の範囲の翻訳文を第三十六条第二項の規定により願書に添付して提出した特許請求の範囲とみなす。


第百八十四条の七(日本語特許出願に係る条約第十九条に基づく補正)

1
日本語特許出願の出願人は、条約第十九条(1)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、同条(1)の規定に基づき提出された補正書の写しを特許庁長官に提出しなければならない。

2
前項の規定により補正書の写しが提出されたときは、その補正書の写しにより、願書に添付した特許請求の範囲について第十七条の二第一項の規定による補正がされたものとみなす。

ただし、条約第二十条の規定に基づき前項に規定する期間内に補正書が特許庁に送達されたときは、その補正書により、補正がされたものとみなす。

3
第一項に規定する期間内に日本語特許出願の出願人により同項に規定する手続がされなかつたときは、条約第十九条(1)の規定に基づく補正は、されなかつたものとみなす。

ただし、前項ただし書に規定するときは、この限りでない。


第百八十四条の八(条約第三十四条に基づく補正)

1
国際特許出願の出願人は、条約第三十四条(2)(b)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、日本語特許出願に係る補正にあつては同条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の写しを、外国語特許出願に係る補正にあつては当該補正書の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。

2
前項の規定により補正書の写し又は補正書の翻訳文が提出されたときは、その補正書の写し又は補正書の翻訳文により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について第十七条の二第一項の規定による補正がされたものとみなす。

ただし、日本語特許出願に係る補正につき条約第三十六条(3)(a)の規定に基づき前項に規定する期間内に補正書が特許庁に送達されたときは、その補正書により、補正がされたものとみなす。

3
第一項に規定する期間内に国際特許出願の出願人により同項に規定する手続がされなかつたときは、条約第三十四条(2)(b)の規定に基づく補正は、されなかつたものとみなす。

ただし、前項ただし書に規定するときは、この限りでない。

4
第二項の規定により外国語特許出願に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について第十七条の二第一項の規定による補正がされたものとみなされたときは、その補正は同条第二項の誤訳訂正書を提出してされたものとみなす。