Patent

擬音語・擬態語の商標について

そもそものきっかけは、「メディクイックH」という製品のページを見たことでした。

このページを読み進めていくと、「ぷつぷつ」「ポロポロ」に、登録商標を表す(R)の文字が。擬音に商標…、これはなんなのだろう…。

そこで、ネットでこの件について調べていたら、凜国際特許業務法人の「商標」のページに、「擬音語・擬態語の商標登録及びその商標権侵害リスク対策」という資料を発見しました。

この資料によれば、擬音語・擬態語で商標登録されているものが多数ある(とくに食品などの分野)ため、商品名として含める場合は既存の商標とは非類似にしたり、パッケージデザイン時に擬態語を食感などを直接的に表現するように配置するよう、アドバイスがされています。

ということは、逆に考えると、擬音の商標権を取得すれば、その擬音については製品名やキャッチコピーに自由に使えるので、類似の他社製品と差別化が図りやすいのではないか、と、個人的に感じました。

一般企業は営利目的なので、行為に対しては何かしらの理由がきっとあるはずです。擬音の商標登録の理由として、個人的な結論としては差別化を図るためだと考えましたが、もちろん他の理由もたくさんあるとは思います。もし、他の理由を御存知でしたらお教えいただけるとありがたいです。

STP事件、マグアンプK事件

商標法に関する事件についてまとめてみます。この記事のタイトルに挙げた2つの事件は、それぞれ似たような事件内容で、大雑把に言えば、商品を勝手に小分けして、小分けしたものに対して、元々の商品の商標を付す行為は、商標法違反であるというものです。

STP事件は大阪地判昭和51年(ヨ)2469号(昭和51年8月4日)、マグアンプK事件は大阪地裁平成6年(ワ)第11250号(大阪地裁平成6年2月24日)です。 マグアンプK事件は判決文が検索できなかったので、下記ページをご参照下さい。

マグアンプK事件 | 弁理士試験 判例大辞典

STP事件の判決文の内容を要約すると、次のとおりです。


事件について

本件疎明によれば、つぎの事実が一応認められる。

  1. 債権者は商標権者である。
  2. 債務者Aは債権者に無断で、債務者Bに対し、債権者製造にかかるものと全く同一の外観を有する本件登録商標を付した罐の製造を依頼し、債務者Bは右依頼により右の罐を製造のうえ債務者Aに引き渡していること。
  3. 債務者Aは、申請外がアメリカから輸入している、本件登録商標を付したドラム罐入りのその指定商品に該当するオイルトリートメントを申請外から買受けたうえ、これを前記2. に記載の一〇オンス入りの罐に小分けして販売していること。

結論

右の事実によると、債務者らの、本件登録商標を前記商品に付する行為ならびに右登録商標を付した右商品の販売行為はいずれも本件商標権を侵害するものというべきである。

理由

登録商標は権利者のみ使用権を有し、第三者はこれを使用することができないことが法により保障され、登録商標が権利者により適法に使用されてはじめて出所表示機能あるいは生産源を示すとの機能を発揮し得るのである。

たとえ、真正商品であつても、何人でも自由にこれに登録商標を付し得るとするならば、登録商標に対する信頼の基礎は失われ、登録商標の機能を発揮し得ないことは明らかである。債務者らの主張は商標法の規定を無視した主張というの外ない。

本件商品は買受人がこれを小分けして転売することは予想されることであるとしても、登録商標の法律上の性質上、右の事情から直ちに権利者が右商品を売却の際これを新たな容器に小分けして第三者が擅に別に作成した登録商標を付すこととまで容認したとは到底解することができない。


一言で言えば、小分けする時点で品質が変わる可能性があって、(品質変化の有無に関わらず)その行為は商標権を侵害するという判示です。

なお、「擅に」は「ほしいままに」と読みます。意味は、やりたいままに振る舞うこと。

色違い類似商標

という言葉は条文内には出て来ませんが、商標法第70条に規定されているものを言います。

定義としては、「その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるもの」をいいます。

第70条 (登録商標に類似する商標等についての特則)

1第25条《商標権の効力》第29条《他人の特許権等との関係》第30条《専用使用権》第2項、第31条《通常使用権》第2項、第31条の2《団体構成員等の権利》第1項、第34条《質権》第1項、第38条《損害の額の推定等》第3項、第50条《商標登録の取消しの審判》第52条の2《商標登録の取消しの審判》第1項、第59条《再審により回復した商標権の効力の制限》第1号、第64条《防護標章登録の要件》第73条《商標登録表示》又は第74条《虚偽表示の禁止》における「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとする。

2第4条《商標登録を受けることができない商標》第1項第12号又は第67条《侵害とみなす行為》における「登録防護標章」には、その登録防護標章に類似する標章であつて、色彩を登録防護標章と同一にするものとすれば登録防護標章と同一の標章であると認められるものを含むものとする。

3第37条《侵害とみなす行為》第1号又は第51条《商標登録の取消しの審判》第1項における「登録商標に類似する商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含まないものとする。

第3項にもありますが、第37条第1号又は第51条第1項における「登録商標に類似する商標」には、色違い類似商標は含まれないのが、注意する点です。

ジョージア事件

商標法の勉強をすると、必ず触れることになる事件です。

まずは、商標法第3条1項3号を確認します。

第3条 (商標登録の要件)

1自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

3
その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

条文の「商品の産地、販売地」をどう捉えるかが事件で問題となりました。判決では必ずしも指定商品がその地で生産・販売されている必要はなく、需要者又は取引者によって、その地で生産・販売されているであろう、と認識させることを持って足りうると解すべきである、との見解でした。

商標登録出願に係る商標が商標法三条一項三号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要者又は取引者によつて、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもつて足りるというべきである。

最高裁判決 昭和60(行ツ)68

なお、ジョージアの商標は、その後登録されました(登録2055753号)。

第3条 (商標登録の要件)

2前項第3号から第5号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。


余談1。今回と同様なことがあったとき、仮に商3条2項の適用があっても、事件によっては商4条1項16号の適用により拒絶される可能性があります。

第4条 (商標登録を受けることができない商標)

1次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

16
商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

余談2。判例の「ひつきよう」は「畢竟」(ひっきょう と読みます) のことで、意味は、結論としては、つまるところ、だそうです。

商標法第4条1項・3項

いわゆる両時判断がされるのは、商4条1項8号・10号・15号・17号又は19号に該当する商標で、それ以外は査定審決時を基準に判断される。

第4条 (商標登録を受けることができない商標)

1次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

1
国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標
2
パリ条約(1900年12月14日にブラッセルで、1911年6月2日にワシントンで、1925年11月6日にヘーグで、1934年6月2日にロンドンで、1958年10月31日にリスボンで及び1967年7月14日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約をいう。以下同じ。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く。)であつて、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標
3
国際連合その他の国際機関を表示する標章であつて経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標
4
赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(昭和22年法律第159号)第1条の標章若しくは名称又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)第158条第1項の特殊標章と同一又は類似の商標
5
日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの
6
国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標
7
公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標
8
他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
9
政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)
10
他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
11
当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第6条《一商標一出願》第1項(第68条《商標に関する規定の準用》第1項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
12
他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの
13
削除
14
種苗法(平成10年法律第83号)第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
15
他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)
16
商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標
17
日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの
18
商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標
19
他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

2国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第6号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。

3第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。

商標権の侵害事件。

<商標法違反容疑>スタバ?いや「スター・バー」で書類送検 毎日新聞

2013年3月8日の新聞の記事ですが、数日で記事自体は削除されると思います。要は、スターバックスと似たロゴを使っていたそうで、お店の名前も「スター・バー」だったそうです。

勉強不足で申し訳ありませんが、この事件は商標は類似のもので、指定商品又は役務についても類似の範囲だと思いますので、間接侵害…なのかなあ…。すっごく自信がありません。間違っていたらごめんなさい。

直接侵害は商標法第78条

第78条 (侵害の罪)

商標権又は専用使用権を侵害した者(第37条《侵害とみなす行為》又は第67条《侵害とみなす行為》の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

間接侵害は商標法第78条の2です

第78条の2 (侵害の罪)

第37条《侵害とみなす行為》又は第67条《侵害とみなす行為》の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

参考になりそうなページ → 手続きや法律を解説するサイト 間接侵害