補正却下後の新出願について
2013-03-11意匠法
補正却下後の新出願について、意匠法17条の3に規定がされています。
1意匠登録出願人が前条第1項の規定による却下の決定の謄本の送達があつた日から3月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をしたときは、その意匠登録出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。
2前項に規定する新たな意匠登録出願があつたときは、もとの意匠登録出願は、取り下げたものとみなす。
3前2項の規定は、意匠登録出願人が第1項に規定する新たな意匠登録出願について同項の規定の適用を受けたい旨を記載した書面をその意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出した場合に限り、適用があるものとする。
そもそも、なぜこの規定があるかというと…。この辺りは青本を参照してみます。
- 特許法及び実用新案法において補正却下後の新出願の制度を廃止した
- しかし、意匠法において同制度を存続することとした
という理由で、昭和60年の一部改正のときに新設されたものだそうです。
ところで、補正の却下については、この条文の1つ前の条文に、このように書かれています。
1願書の記載又は願書に添付した図面、写真、ひな形若しくは見本についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
2~4 省略。
つまり、補正時に要旨変更の有無が確認されます。
なお、要旨変更であると認められた場合は…
- 意47条1項の規定により補正却下決定不服審判を請求することができる
- 審判を請求することなくその決定が確定し、又は請求をしたが理由なしとされて請求不成立とされた場合の当該審決が確定してしまうとその補正はされなかったことになり、審査はその補正がされていない姿の意匠登録出願について行われる
そこで、問題があり、 補正をしてから数か月あるいは一年以上も経った後に要旨変更であると認定される場合も少なくありません。 却下された後に新出願しても、その時点で出願の時点が、数か月あるいは一年以上も遅れたままであるというのは、意匠登録出願人に苛酷です。
そこで、特例として、 却下の決定があった補正に含まれる意匠について新たな意匠登録出願をした場合におけるその意 匠登録出願の時点を、手続補正書を提出した時にしたものとみなす、という決まりがあります。
この特例を適用する条件として、 もとの意匠登録出願は取り下げたものとみなされます。 なので、この規定の適用を受けたい場合は、 意匠登録出願人が第一項に規定する新たな意匠登録出願について同項の規定の適用を受けた い旨を記載した書面をその意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出した場合に限り、適用があるものとする、と、第3項で書かれています。
また、意匠法第17条の3は、意匠法50条第1項、商標法第55条の2第3項においても準用されていますが、これは、拒絶査定不服審判中に審判官によってなされた補正却下決定についてです。
拒絶査定不服審判中に審判官によってなされた補正却下決定に対して不服がある場合には、 東京高等裁判所に出訴することができます。このときの出訴期間は、 審判においては審査と比べてより慎重な審理が行われるため、 それに対して取消訴訟を行うかどうかの判断は比較的容易に行うことができると考えられることなどから、決定の謄本の送達があった日から30日としています。 (意匠法第59条第2項及び商標法第63条第2項において準用する特許法第178条第3項)。
したがって、意匠法50条及び商標法55条の2に読み替え規定を置くことにより、補正却下の決定の謄本送達の後に審決を行ってはならない期間、及び補正後の新出願が可能な期間についても、30日となっています。
ほぼ、青本と特許庁の資料の書き写しになってしまいました…。ちゃんとした解説は、次をご参照ください…。
- 工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第19版〕 1114ページ
- 特許庁 法令改正の解説 平成20年法律改正(平成20年法律第16号)解説 59ページ