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条文を読む

法文集を買う

知的財産法の勉強をするにあたって、どうしても条文を読むということからは逃れられません。条文はネット上でも読めますが、本格的に勉強するためには、やはり条文集を購入するのが良いでしょう。知的財産法がメインとなるため、次の法律の条文が掲載された本を選ぶのが良いでしょう。

  • 特許法
  • 実用新案法
  • 意匠法
  • 商標法
  • 著作権法
  • 不正競争防止法

いわゆる「知的財産権法文集」という種類の本は、上の法律や、条約、その他参照される法律が掲載されています。発明協会やPATECH企画の出している本がポピュラーなので、これを選ぶか、もしくは横書きのほうが見やすければ、横組のものを選ぶとよいでしょう。

特許法、実用新案法、意匠法、商標法はいわゆる知財四法と言われていて、各々の条文を比較しやすくする「四法対照法文集」というのもありますが、これは比較することがメインであり、1条ずつ読んでいくものではありません。なので、初めて勉強する場合には、一般的な法文集を選ぶのが良いでしょう。

条文の見方

特許法は、全部で204条あります。しかし、条文が204あるわけではなく、中には削除されたものがあったり、第何条の2とか第何条の3のように、枝番号のついた条文もあります。これによって、特許法は条文数で数えると204を超える条文があります。

初めて勉強するときは、「第何条の2」というと、「第何条」と関連する条文かな、と思うこともありますが、単に条文が後から挿入されて既存の条文の番号をずらさないために枝番号をつけただけなので、枝番号の付かない条文と枝番号のついた条文とでは、ほぼ関連性はありません。

さて、少し条文を見てみましょう。特許法第1条は次のようになっています。

第一条(目的)

この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

(目的)というのは、その条文の見出しです。見出しが無い場合は、その前の条文の見出しと同じ見出しであることを示しています。

続いて第2条。

第二条(定義)

この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

二 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

三 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

1 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為

2 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為

(以下省略)

条文の中には、二、三のように漢数字で振られた項目があります。これは、条文の中を更に分けていて、「項」といいます。第2条の直後の文は「この法律で「発明」とは~」とあって、漢数字は振られていませんが、これは第一項となります。「この法律で「特許発明」とは~」とあるのが第二項ですね。第三項には、さらに1、2とありますが、これは号といい、いくつかの事項を列挙する場合に使われます。「物の実施」について書かれているのは、特許法第2条第3項1号、というふうに指すわけですね。

次に、特許法第7条1項を見てみます。

第七条(未成年者、成年被後見人等の手続をする能力)

未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、手続をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができるときは、この限りでない。

特許法第7条1項は2つの文で構成されています。第1文を「本文」といい、「ただし、」から始まる文を「但書(ただしがき)」といいます。但書は本文の例外を記したものです。

同じ2文で構成されている条文でも、第2文が「ただし、」で始まらない場合は、第1文を前段、第2文を後段といいます。例えば特許法第39条第2項は次のようになっています。

第三十九条(先願)

二 同一の発明について同日に2以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。

協議が成立せず~、と始まる文が後段ですね。

号は事項の列挙に使われることを述べましたが、号の前には「次に掲げる」とか「次の各号に」といったような、号を列挙することを示す文を必ず入れています。この文を「柱書(はしらがき)」といいます。

条文は条→項→号の順で細分化され、2文ある条文は本文と但書、もしくは前段と後段に分けられることを説明しましたが、もうちょっと細かいことは次のページを見ると良いでしょう。

ぱてんとどっと混む(弁理士試験モード稼働中) : 条文の読み方

勉強の方法

条文を勉強する方法は色々あると思います。自分にあった方法が見つかると良いと思うのですが、最初はどうすればいいかわからないかもしれません。なので、私の勉強方法を書いてみたいと思います。次に上げる方法がベストであるとは全然思っていませんが、なにかのヒントになれば良いなあと思います。

  1. とりあえず素読みする
    まずは条文をちゃんと理解しようとせず、全体像をつかむということで、ひと通り読んでしまいます。条文は、他の条文を参照することがよくあるのですが、例えば特許法第4条では、特許法第46条の2、第108条、第121条、第173条について書かれています。今読んでいる条文よりも後に出てくる条文を平気で引いてくるのが条文です。いちいち第46条の2をみたりすると時間が掛かるので、まずはすっ飛ばします。第4条に関しては、特許庁長官が遠隔又は交通不便の地にある者のために期間を延長することがあるんだなあ、くらいの理解でいいと思います。
  2. 見出しをメモっておく
    全体像をつかむということで、見出しは最初にまとめておくといいと思います。その法律には何が書かれているかを、手早く知ることができると思います。
  3. カッコの中の文をラインマーカーで塗る
    条文を読みづらくしている原因に、カッコ書きがたくさんあることが挙げられるでしょう。二重括弧、場合によっては三重括弧もあります。例えば特許法第17条の3
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    第17条の3 (要約書の補正)
    特許出願人は、特許出願の日 (第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあつては、同項に規定する先の出願の日、第43条第1項又は第43条の2第1項若しくは第2項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあつては、最初の出願若しくはパリ条約(1900年12月14日にブラッセルで、1911年6月2日にワシントンで、1925年11月6日にヘーグで、1934年6月2日にロンドンで、1958年10月31日にリスボンで及び1967年7月14日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約をいう。以下同じ。)第4条C⑷の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A⑵の規定により最初の出願と認められた出願の日、第41条第1項、第43条第1項又は第43条の2第1項若しくは第2項の規定による2以上の優先権の主張を伴う特許出願にあつては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第36条の2第2項本文及び第64条第1項において同じ。) から1年3月以内 (出願公開の請求があつた後を除く。) に限り、願書に添付した要約書について補正をすることができる。
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    カッコを抜かして読むと「特許出願人は、特許出願の日から1年3月以内に限り、願書に添付した要約書について補正をすることができる。」となります。まずはここをちゃんと押さえることが重要です。カッコ書きをラインマーカーで塗りつぶすと、塗りつぶしていない部分が条文の本体なので、その部分だけ拾って読めば、その条文の書かれていることが分かります。カッコ書きの優先権主張を伴う特許出願の場合とかについては、もう一度読み返すときに気にするくらいの心持ちでいいと思います。