Patent

STP事件、マグアンプK事件

商標法に関する事件についてまとめてみます。この記事のタイトルに挙げた2つの事件は、それぞれ似たような事件内容で、大雑把に言えば、商品を勝手に小分けして、小分けしたものに対して、元々の商品の商標を付す行為は、商標法違反であるというものです。

STP事件は大阪地判昭和51年(ヨ)2469号(昭和51年8月4日)、マグアンプK事件は大阪地裁平成6年(ワ)第11250号(大阪地裁平成6年2月24日)です。 マグアンプK事件は判決文が検索できなかったので、下記ページをご参照下さい。

マグアンプK事件 | 弁理士試験 判例大辞典

STP事件の判決文の内容を要約すると、次のとおりです。


事件について

本件疎明によれば、つぎの事実が一応認められる。

  1. 債権者は商標権者である。
  2. 債務者Aは債権者に無断で、債務者Bに対し、債権者製造にかかるものと全く同一の外観を有する本件登録商標を付した罐の製造を依頼し、債務者Bは右依頼により右の罐を製造のうえ債務者Aに引き渡していること。
  3. 債務者Aは、申請外がアメリカから輸入している、本件登録商標を付したドラム罐入りのその指定商品に該当するオイルトリートメントを申請外から買受けたうえ、これを前記2. に記載の一〇オンス入りの罐に小分けして販売していること。

結論

右の事実によると、債務者らの、本件登録商標を前記商品に付する行為ならびに右登録商標を付した右商品の販売行為はいずれも本件商標権を侵害するものというべきである。

理由

登録商標は権利者のみ使用権を有し、第三者はこれを使用することができないことが法により保障され、登録商標が権利者により適法に使用されてはじめて出所表示機能あるいは生産源を示すとの機能を発揮し得るのである。

たとえ、真正商品であつても、何人でも自由にこれに登録商標を付し得るとするならば、登録商標に対する信頼の基礎は失われ、登録商標の機能を発揮し得ないことは明らかである。債務者らの主張は商標法の規定を無視した主張というの外ない。

本件商品は買受人がこれを小分けして転売することは予想されることであるとしても、登録商標の法律上の性質上、右の事情から直ちに権利者が右商品を売却の際これを新たな容器に小分けして第三者が擅に別に作成した登録商標を付すこととまで容認したとは到底解することができない。


一言で言えば、小分けする時点で品質が変わる可能性があって、(品質変化の有無に関わらず)その行為は商標権を侵害するという判示です。

なお、「擅に」は「ほしいままに」と読みます。意味は、やりたいままに振る舞うこと。