特許法 第四章 特許権 第三節 特許料(特107~112)

第百七条(特許料)

1
特許権の設定の登録を受ける者又は特許権者は、特許料として、特許権の設定の登録の日から第六十七条第一項に規定する存続期間(同条第二項の規定により延長されたときは、その延長の期間を加えたもの)の満了までの各年について、一件ごとに、次の表の上欄に掲げる区分に従い同表の下欄に掲げる金額を納付しなければならない。

2
前項の規定は、国に属する特許権には、適用しない。

3
第一項の特許料は、特許権が国又は第百九条の規定若しくは他の法令の規定による特許料の軽減若しくは免除(以下この項において「減免」という。)を受ける者を含む者の共有に係る場合であつて持分の定めがあるときは、第一項の規定にかかわらず、国以外の各共有者ごとに同項に規定する特許料の金額(減免を受ける者にあつては、その減免後の金額)にその持分の割合を乗じて得た額を合算して得た額とし、国以外の者がその額を納付しなければならない。

4
前項の規定により算定した特許料の金額に十円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

5
第一項の特許料の納付は、経済産業省令で定めるところにより、特許印紙をもつてしなければならない。

ただし、経済産業省令で定める場合には、経済産業省令で定めるところにより、現金をもつて納めることができる。


第百八条(特許料の納付期限)

1
前条第一項の規定による第一年から第三年までの各年分の特許料は、特許をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に一時に納付しなければならない。

2
前条第一項の規定による第四年以後の各年分の特許料は、前年以前に納付しなければならない。

ただし、特許権の存続期間の延長登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日(以下この項において「謄本送達日」という。)がその延長登録がないとした場合における特許権の存続期間の満了の日の属する年の末日から起算して前三十日目に当たる日以後であるときは、その年の次の年から謄本送達日の属する年(謄本送達日から謄本送達日の属する年の末日までの日数が三十日に満たないときは、謄本送達日の属する年の次の年)までの各年分の特許料は、謄本送達日から三十日以内に一時に納付しなければならない。

3
特許庁長官は特許料を納付すべき者の請求により、三十日以内を限り、第一項に規定する期間を延長することができる。


第百九条(特許料の減免又は猶予)

特許庁長官は特許権の設定の登録を受ける者又は特許権者であつて資力を考慮して政令で定める要件に該当する者が、特許料を納付することが困難であると認めるときは、政令で定めるところにより、第百七条第一項の規定による第一年から第十年までの各年分の特許料を軽減し若しくは免除し、又はその納付を猶予することができる。


第百十条(利害関係人による特許料の納付)

1
利害関係人は納付すべき者の意に反しても、特許料を納付することができる。

2
前項の規定により特許料を納付した利害関係人は納付すべき者が現に利益を受ける限度においてその費用の償還を請求することができる。


第百十一条(既納の特許料の返還)

1
既納の特許料は、次に掲げるものに限り、納付した者の請求により返還する。

1
過誤納の特許料
2
特許を無効にすべき旨の審決が確定した年の翌年以後の各年分の特許料
3
特許権の存続期間の延長登録を無効にすべき旨の審決が確定した年の翌年以後の各年分の特許料(当該延長登録がないとした場合における存続期間の満了の日の属する年の翌年以後のものに限る。)

2
前項の規定による特許料の返還は、同項第一号の特許料については納付した日から一年、同項第二号及び第三号の特許料については審決が確定した日から六月を経過した後は、請求することができない。


第百十二条(特許料の追納)

1
特許権者は、第百八条第二項に規定する期間又は第百九条の規定による納付の猶予後の期間内に特許料を納付することができないときは、
その期間が経過した後であつても、その期間の経過後六月以内にその特許料を追納することができる。

2
前項の規定により特許料を追納する特許権者は、第百七条第一項の規定により納付すべき特許料のほか、その特許料と同額の割増特許料を納付しなければならない。

3
前項の割増特許料の納付は、経済産業省令で定めるところにより、特許印紙をもつてしなければならない。

ただし、経済産業省令で定める場合には、経済産業省令で定めるところにより、現金をもつて納めることができる。

4
特許権者が第一項の規定により特許料を追納することができる期間内に、第百八条第二項本文に規定する期間内に納付すべきであつた特許料及び第二項の割増特許料を納付しないときは、その特許権は、同条第二項本文に規定する期間の経過の時にさかのぼつて消滅したものとみなす。

5
特許権者が第一項の規定により特許料を追納することができる期間内に第百八条第二項ただし書に規定する特許料及び第二項の割増特許料を納付しないときは、その特許権は、当該延長登録がないとした場合における特許権の存続期間の満了の日の属する年の経過の時にさかのぼつて消滅したものとみなす。

6
特許権者が第一項の規定により特許料を追納することができる期間内に第百九条の規定により納付が猶予された特許料及び第二項の割増特許料を納付しないときは、その特許権は、初めから存在しなかつたものとみなす。


第百十二条の二(特許料の追納による特許権の回復)

1
前条第四項若しくは第五項の規定により消滅したものとみなされた特許権又は同条第六項の規定により初めから存在しなかつたものとみなされた特許権の原特許権者は、同条第一項の規定により特許料を追納することができる期間内に同条第四項から第六項までに規定する特許料及び割増特許料を納付することができなかつたことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなつた日から二月以内でその期間の経過後一年以内に限り、その特許料及び割増特許料を追納することができる。

2
前項の規定による特許料及び割増特許料の追納があつたときは、その特許権は、第百八条第二項本文に規定する期間の経過の時若しくは存続期間の満了の日の属する年の経過の時にさかのぼつて存続していたもの又は初めから存在していたものとみなす。


第百十二条の三(回復した特許権の効力の制限)

1
前条第二項の規定により特許権が回復した場合において、その特許が物の発明についてされているときは、その特許権の効力は、第百十二条第一項の規定により特許料を追納することができる期間の経過後特許権の回復の登録前に輸入し、又は日本国内において生産し、若しくは取得した当該物には、及ばない。

2
前条第二項の規定により回復した特許権の効力は、第百十二条第一項の規定により特許料を追納することができる期間の経過後特許権の回復の登録前における次に掲げる行為には、及ばない。

1
当該発明の実施
2
特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をした行為
3
特許が物の発明についてされている場合において、その物を譲渡等又は輸出のために所持した行為
4
特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をした行為
5
特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を譲渡等又は輸出のために所持した行為

特許法 第四章 特許権 第二節 権利侵害(特100~106)

第百条(差止請求権)

1
特許権者又は専用実施権者は
自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し
その侵害の停止又は予防を請求することができる。

2
特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。第百二条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。


第百一条(侵害とみなす行為)

次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。

1
特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
2
特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
3
特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
4
特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
5
特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
6
特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為

第百二条(損害の額の推定等)

1
特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。

ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

2
特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。

3
特許権者又は専用実施権者は故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

4
前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。

この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。


第百三条(過失の推定)

他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。


第百四条(生産方法の推定)

物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する。


第百四条の二(具体的態様の明示義務)

特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。

ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。


第百四条の三(特許権者等の権利行使の制限)

1
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は相手方に対しその権利を行使することができない。

2
前項の規定による攻撃又は防御の方法については、これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。

3
第百二十三条第二項ただし書の規定は、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者以外の者が第一項の規定による攻撃又は防御の方法を提出することを妨げない。


第百四条の四(主張の制限)

特許権若しくは専用実施権の侵害又は第六十五条第一項若しくは第百八十四条の十第一項に規定する補償金の支払の請求に係る訴訟の終局判決が確定した後に、
次に掲げる審決が確定したときは、当該訴訟の当事者であつた者は、当該終局判決に対する再審の訴え(当該訴訟を本案とする仮差押命令事件の債権者に対する損害賠償の請求を目的とする訴え並びに当該訴訟を本案とする仮処分命令事件の債権者に対する損害賠償及び不当利得返還の請求を目的とする訴えを含む。)において、当該審決が確定したことを主張することができない。

1
当該特許を無効にすべき旨の審決
2
当該特許権の存続期間の延長登録を無効にすべき旨の審決
3
当該特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすべき旨の審決であつて政令で定めるもの

第百五条(書類の提出等)

1
裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。

ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

2
裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。

この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。

3
裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあつては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。

4
前三項の規定は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟における当該侵害行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。


第百五条の二(損害計算のための鑑定)

特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。


第百五条の三(相当な損害額の認定)

特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、
損害が生じたことが認められる場合において、
損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、
裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。


第百五条の四(秘密保持命令)

1
裁判所は
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、
その当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法 (平成五年法律第四十七号)第二条第六項 に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があつた場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。

ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。

1
既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第百五条第三項の規定により開示された書類又は第百五条の七第四項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。
2
前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。

2
前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。

1
秘密保持命令を受けるべき者
2
秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実
3
前項各号に掲げる事由に該当する事実

3
秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。

4
秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。

5
秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


第百五条の五(秘密保持命令の取消し)

1
秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は
訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあつては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し
前条第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至つたことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。

2
秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があつた場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。

3
秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

4
秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。

5
裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。


第百五条の六(訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)

1
秘密保持命令が発せられた訴訟(すべての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く。)に係る訴訟記録につき、
民事訴訟法第九十二条第一項 の決定があつた場合において、
当事者から同項 に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行つた者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、
裁判所書記官は同項の申立てをした当事者(その請求をした者を除く。第三項において同じ。)に対し
その請求後直ちに、その請求があつた旨を通知しなければならない。

2
前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があつた日から二週間を経過する日までの間(その請求の手続を行つた者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあつては、その申立てについての裁判が確定するまでの間)その請求の手続を行つた者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。

3
前二項の規定は、第一項の請求をした者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第九十二条第一項 の申立てをした当事者のすべての同意があるときは、適用しない。


第百五条の七(当事者尋問等の公開停止)

1
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟における当事者等が
その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であつて当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、
当事者本人若しくは法定代理人又は証人として尋問を受ける場合においては、
裁判所は、裁判官の全員一致により、
その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによつては当該事項を判断の基礎とすべき特許権又は専用実施権の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。

2
裁判所は、前項の決定をするに当たつては、あらかじめ、当事者等の意見を聴かなければならない。

3
裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。

この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない。

4
裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。

5
裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。

当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。


第百六条(信用回復の措置)

故意又は過失により特許権又は専用実施権を侵害したことにより特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を害した者に対しては、裁判所は、特許権者又は専用実施権者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

特許法 第四章 特許権 第一節 特許権 その7(特94~99)

特許権の移転、質権、放棄、登録の効果、通常実施権の対抗力についての規定です。


第九十四条(通常実施権の移転等)

1
通常実施権は、

  • 第八十三条第二項、
  • 第九十二条第三項若しくは第四項若しくは
  • 前条第二項、
  • 実用新案法第二十二条第三項又は
  • 意匠法第三十三条第三項

の裁定による通常実施権を除き、

  • 実施の事業とともにする場合、
  • 特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び
  • 相続その他の一般承継の場合

に限り、移転することができる。

2
通常実施権者は

  • 第八十三条第二項、
  • 第九十二条第三項若しくは第四項若しくは
  • 前条第二項、
  • 実用新案法第二十二条第三項又は
  • 意匠法第三十三条第三項

の裁定による通常実施権を除き、
特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、その通常実施権について質権を設定することができる。

3
第八十三条第二項又は前条第二項の裁定による通常実施権は、実施の事業とともにする場合に限り、移転することができる。

4

  • 第九十二条第三項、
  • 実用新案法第二十二条第三項又は
  • 意匠法第三十三条第三項

の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権又は意匠権が実施の事業とともに移転したときはこれらに従つて移転し、その特許権、実用新案権又は意匠権が実施の事業と分離して移転したとき、又は消滅したときは消滅する。

5
第九十二条第四項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権又は意匠権に従つて移転し、その特許権、実用新案権又は意匠権が消滅したときは消滅する。

6
第七十三条第一項の規定は、通常実施権に準用する。


第九十五条(質権)

特許権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該特許発明の実施をすることができない。


第九十六条(質権)

特許権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権は、特許権、専用実施権若しくは通常実施権の対価又は特許発明の実施に対しその特許権者若しくは専用実施権者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行うことができる。

ただし、その払渡又は引渡前に差押をしなければならない。


第九十七条(特許権等の放棄)

1
特許権者は

  • 専用実施権者、
  • 質権者又は
  • 第三十五条第一項、
  • 第七十七条第四項若しくは
  • 第七十八条第一項

の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる。

2
専用実施権者は、質権者又は第七十七条第四項の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権を放棄することができる。

3
通常実施権者は、質権者があるときは、その承諾を得た場合に限り、その通常実施権を放棄することができる。


第九十八条(登録の効果)

1
次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。

1
特許権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、信託による変更、放棄による消滅又は処分の制限
2
専用実施権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は特許権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
3
特許権又は専用実施権を目的とする質権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限

2
前項各号の相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。


第九十九条(通常実施権の対抗力)

通常実施権は、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する。