特許法 第三章の二 出願公開(特64~65)

第六十四条(出願公開)

1
特許庁長官は、特許出願の日から一年六月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第一項に規定する出願公開の請求があつたときも、同様とする。

2
出願公開は、次に掲げる事項を特許公報に掲載することにより行う。

ただし、第四号から第六号までに掲げる事項については、当該事項を特許公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。

1
特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
2
特許出願の番号及び年月日
3
発明者の氏名及び住所又は居所
4
願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
5
願書に添付した要約書に記載した事項
6
外国語書面出願にあつては、外国語書面及び外国語要約書面に記載した事項
7
出願公開の番号及び年月日
8
前各号に掲げるもののほか、必要な事項

3
特許庁長官は、願書に添付した要約書の記載が第三十六条第七項の規定に適合しないときその他必要があると認めるときは、前項第五号の要約書に記載した事項に代えて、自ら作成した事項を特許公報に掲載することができる。

17条の3に注意。

特許出願人は、特許出願の日(

  • 第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあつては、同項に規定する先の出願の日、
  • 第四十三条第一項又は第四十三条の二第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあつては、最初の出願若しくはパリ条約 …
    第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、
  • 第四十一条第一項、第四十三条第一項又は第四十三条の二第一項若しくは第二項の規定による二以上の優先権の主張を伴う特許出願にあつては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。

… 第六十四条第一項において同じ。)に限り、願書に添付した要約書について補正をすることができる。

優先権主張を伴う場合は第一国出願日から、部分優先や複合優先の場合はそれぞれ最も早い第一国出願日が起算日となる。

分割や出願変更ももとの出願日から起算される。


第六十四条の二(出願公開の請求)

1
特許出願人は、次に掲げる場合を除き、特許庁長官に、その特許出願について出願公開の請求をすることができる。

1
その特許出願が出願公開されている場合
2
その特許出願が第四十三条第一項又は第四十三条の二第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う特許出願であつて、第四十三条第二項(第四十三条の二第三項において準用する場合を含む。)に規定する書類及び第四十三条第五項(第四十三条の二第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面が特許庁長官に提出されていないものである場合
3
その特許出願が外国語書面出願であつて第三十六条の二第二項に規定する外国語書面の翻訳文が特許庁長官に提出されていないものである場合

2
出願公開の請求は、取り下げることができない。

1項2号、優先権証明書が提出がされていない場合は、出願公開の請求はできない。出願人の意思が確定していないから。1項3号は翻訳文がなければ出願公開の準備に入ることが出来ないから。


第六十四条の三(出願公開の請求)

出願公開の請求をしようとする特許出願人は、次に掲げる事項を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない。

1
請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
2
出願公開の請求に係る特許出願の表示

第六十五条(出願公開の効果等)

1
特許出願人は、出願公開があつた後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。

当該警告をしない場合においても、出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする。

2
前項の規定による請求権は、特許権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができない。

3
特許出願人はその仮専用実施権者又は仮通常実施権者が、その設定行為で定めた範囲内において当該特許出願に係る発明を実施した場合については、第一項に規定する補償金の支払を請求することができない。

4
第一項の規定による請求権の行使は、特許権の行使を妨げない。

5
出願公開後に特許出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第百十二条第六項の規定により特許権が初めから存在しなかつたものとみなされたとき(更に第百十二条の二第二項の規定により特許権が初めから存在していたものとみなされたときを除く。)、又は第百二十五条ただし書の場合を除き特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。

6
第百一条、第百四条から第百四条の三まで、第百五条、第百五条の二、第百五条の四から第百五条の七まで及び第百六十八条第三項から第六項まで並びに民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百十九条 及び第七百二十四条(不法行為)の規定は、第一項の規定による請求権を行使する場合に準用する。

この場合において、当該請求権を有する者が特許権の設定の登録前に当該特許出願に係る発明の実施の事実及びその実施をした者を知つたときは、同条 中「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」とあるのは、「特許権の設定の登録の日」と読み替えるものとする。

出願公開の効果は、補償金請求権の発生である。

補償金請求権の始期は設定登録から、終期は6項民724条より設定登録から3年。

特許法 第三章 審査 その3(特50~54)

第五十条(拒絶理由の通知)

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、
特許出願人に対し
拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。

ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。

但書、先に53条1項を確認したほうがよい。53条1項は不適法な補正がされたときについて定めているが、新規事項を追加する補正とシフト補正については49条1号にも該当する。その時は、53条1項の規定を優先的に適用することが定められている。


第五十条の二(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)

審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、
当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条
(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)及び
第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)

の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。

分割出願等の審査における審査官の通知について定めている。

当該特許出願を甲、他の特許出願を乙とすると、少なくともいずれか一方に44条2項の規定が適用されたことによって、当該特許出願と同時にされたこととなっているので、考えられるパターンは以下の3つである。

  • 甲が乙の分割出願である場合
  • 乙が甲の分割出願である場合
  • 甲と乙が、同じ特許出願に基づく分割出願である場合

第五十一条(特許査定)

審査官は、特許出願について拒絶の理由を発見しないときは、特許をすべき旨の査定をしなければならない。


第五十二条(査定の方式)

1
査定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。

2
特許庁長官は、査定があつたときは、査定の謄本を特許出願人に送達しなければならない。

査定は、特許査定・拒絶査定の両方を指す。また、謄本の送達にあった時に、査定の効力が生ずるものと考えられる。


第五十三条(補正の却下)

1
第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合
(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。

2
前項の規定による却下の決定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。

3
第一項の規定による却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

ただし、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においては、この限りでない。

17条の2第1項は、補正の時期について定めたものであり、その時期(2回目以降の拒絶理由通知がされた場合)に行われた補正にが不適法であることが、特許査定の謄本の送達前に認められた場合は、その補正を却下するものとした。審査の迅速性のためである。

なお、特許査定の謄本の送達後に2回目以降の拒絶理由通知に対する不適法な補正が行われたことが認められたときは、新規事項を追加する補正のみが無効理由となる(123条1項1号)。その他の用件は、補正の制限が審査の迅速性や出願間の公平な取扱いの観点からによるという趣旨からすると、無効にするほど実質的な瑕疵があるとは認められないため、無効理由とはされていない。


第五十四条(訴訟との関係)

1
審査において必要があると認めるときは、審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができる。

2
訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、査定が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。

審判又は訴訟手続との関係で審査を中止する場合、および、審査との関係で訴訟手続を中止する場合について規定したもの。

特許法 第三章 審査 その2(特49) 拒絶査定

第四十九(拒絶の査定)

審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。

1
その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項(新規事項を追加する補正の制限)又は第四項(シフト補正の禁止)に規定する要件を満たしていないとき。
2
その特許出願に係る発明が第二十五条(外国人の権利の享有)、第二十九条(新規性)、第二十九条の二(進歩性)、第三十二条(特許を受けることができない発明)、第三十八条(共同出願)又は第三十九条第一項から第四項まで(先願)の規定により特許をすることができないものであるとき。
3
その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき。
4
その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。
5
前条(48条の7、文献公知発明に係る情報の記載についての通知)の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
6
その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
7
その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき。

これ以外の理由によって特許出願について拒絶査定をすることはできない。また、これらに該当する場合は、審査官は必ず拒絶しなければならない。