特許法 第四章 特許権 第一節 特許権 その3(特73~76)

特73条から76条までは、共有にかかる特許権についての規則及び、特許権の移転について規定されています。


第七十三条(共有に係る特許権)

1
特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。

2
特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。

3
特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。


第七十四条(特許権の移転の特例)

1
特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当するとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当するときは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者は、経済産業省令で定めるところにより、その特許権者に対し、当該特許権の移転を請求することができる。

2
前項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録があつたときは、その特許権は、初めから当該登録を受けた者に帰属していたものとみなす。

当該特許権に係る発明についての第六十五条第一項又は第百八十四条の十第一項の規定による請求権についても、同様とする。

3
共有に係る特許権について第一項の規定による請求に基づきその持分を移転する場合においては、前条第一項の規定は、適用しない。


第七十六条(相続人がない場合の特許権の消滅)

特許権は、民法第九百五十八条 の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、消滅する。

特許法 第四章 特許権 第一節 特許権 その2(特68~72)

68条から72条は、特許権の効力の範囲について規定されています。


第六十八条(特許権の効力)

特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。

ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。


第六十八条の二(存続期間が延長された場合の特許権の効力)

特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。


第六十九条(特許権の効力が及ばない範囲)

1
特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。

2
特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。

1
単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物
2
特許出願の時から日本国内にある物

3
二以上の医薬(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明又は二以上の医薬を混合して医薬を製造する方法の発明に係る特許権の効力は、医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない。


第七十条(特許発明の技術的範囲)

1
特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。

2
前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。

3
前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。


第七十一条(特許発明の技術的範囲)

1
特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。

2
特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。

3

  • 第百三十一条第一項、
  • 第百三十一条の二第一項本文、
  • 第百三十二条第一項及び第二項、
  • 第百三十三条、
  • 第百三十三条の二、
  • 第百三十四条第一項、第三項及び第四項、
  • 第百三十五条、
  • 第百三十六条第一項及び第二項、
  • 第百三十七条第二項、
  • 第百三十八条、
  • 第百三十九条(第六号を除く。)
  • 第百四十条から第百四十四条まで、
  • 第百四十四条の二第一項及び第三項から第五項まで、
  • 第百四十五条第二項から第五項まで、
  • 第百四十六条、
  • 第百四十七条第一項及び第二項、
  • 第百五十条第一項から第五項まで、
  • 第百五十一条から第百五十四条まで、
  • 第百五十五条第一項、
  • 第百五十七条並びに
  • 第百六十九条第三項、第四項及び第六項

の規定は、第一項の判定に準用する。

この場合において、

  • 第百三十五条中「審決」とあるのは「決定」と、
  • 第百四十五条第二項中「前項に規定する審判以外の審判」とあるのは「判定の審理」と、
  • 同条第五項ただし書中「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとき」とあるのは「審判長が必要があると認めるとき」と、
  • 第百五十一条中「第百四十七条」とあるのは「第百四十七条第一項及び第二項」と、
  • 第百五十五条第一項中「審決が確定するまで」とあるのは「判定の謄本が送達されるまで」と

読み替えるものとする。

4
前項において読み替えて準用する第百三十五条の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。


第七十一条の二(特許発明の技術的範囲)

1
特許庁長官は、裁判所から特許発明の技術的範囲について鑑定の嘱託があつたときは、三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない。

2
第百三十六条第一項及び第二項、第百三十七条第二項並びに第百三十八条の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。


第七十二条(他人の特許発明等との関係)

特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない。

特許法 第四章 特許権 第一節 特許権 その1(特66~67の4)

特許法第4章第1節は特許権に係わる条文が規定されています。当然のことながら、権利を取得した後から権利が消滅するまでの規定です。第4章第1節は、その内容から、更に次のように分けることが出来そうです。

  • 特許権が存する期間(66条~67条の4)
  • 特許権の効力(68条~72条)
  • 特許権の移転(73条~76条)
  • 実施権(77条~94条)
  • 質権、特許権の放棄、登録の効果、通常実施権の対抗力(95条~99条)

第六十六条(特許権の設定の登録)

1
特許権は、設定の登録により発生する。

2
第百七条第一項の規定による第一年から第三年までの各年分の特許料の納付又はその納付の免除若しくは猶予があつたときは、特許権の設定の登録をする。

3
前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。ただし、第五号に掲げる事項については、その特許出願について出願公開がされているときは、この限りでない。

1
特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所
2
特許出願の番号及び年月日
3
発明者の氏名及び住所又は居所
4
願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
5
願書に添付した要約書に記載した事項
6
特許番号及び設定の登録の年月日
7
前各号に掲げるもののほか、必要な事項

4
第六十四条第三項の規定は、前項の規定により同項第五号の要約書に記載した事項を特許公報に掲載する場合に準用する。


第六十七条(存続期間)

1
特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。

2
特許権の存続期間は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。


第六十七条の二(存続期間の延長登録)

1
特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

1
出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
2
特許番号
3
延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)
4
前条第二項の政令で定める処分の内容

2
前項の願書には、経済産業省令で定めるところにより、延長の理由を記載した資料を添付しなければならない。

3
特許権の存続期間の延長登録の出願は、前条第二項の政令で定める処分を受けた日から政令で定める期間内にしなければならない。ただし、同条第一項に規定する特許権の存続期間の満了後は、することができない。

4
特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができない。

5
特許権の存続期間の延長登録の出願があつたときは、存続期間は、延長されたものとみなす。ただし、その出願について拒絶をすべき旨の査定が確定し、又は特許権の存続期間を延長した旨の登録があつたときは、この限りでない。

6
特許権の存続期間の延長登録の出願があつたときは、第一項各号に掲げる事項並びにその出願の番号及び年月日を特許公報に掲載しなければならない。


第六十七条の二の二(存続期間の延長登録)

1
特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、第六十七条第一項に規定する特許権の存続期間の満了前六月の前日までに同条第二項の政令で定める処分を受けることができないと見込まれるときは、次に掲げる事項を記載した書面をその日までに特許庁長官に提出しなければならない。

1
出願をしようとする者の氏名又は名称及び住所又は居所
2
特許番号
3
第六十七条第二項の政令で定める処分

2
前項の規定により提出すべき書面を提出しないときは、第六十七条第一項に規定する特許権の存続期間の満了前六月以後に特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができない。

3
第一項に規定する書面が提出されたときは、同項各号に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。


第六十七条の三(存続期間の延長登録)

1
審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。

1
その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。
2
その特許権者又はその特許権についての専用実施権若しくは通常実施権を有する者が第六十七条第二項の政令で定める処分を受けていないとき。
3
その延長を求める期間がその特許発明の実施をすることができなかつた期間を超えているとき。
4
その出願をした者が当該特許権者でないとき。
5
その出願が第六十七条の二第四項に規定する要件を満たしていないとき。

2
審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、延長登録をすべき旨の査定をしなければならない。

3
特許権の存続期間の延長登録をすべき旨の査定又は審決があつたときは、特許権の存続期間を延長した旨の登録をする。

4
前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。

1
特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所
2
特許番号
3
特許権の存続期間の延長登録の出願の番号及び年月日
4
延長登録の年月日
5
延長の期間
6
第六十七条第二項の政令で定める処分の内容

第六十七条の四(存続期間の延長登録)

第四十七条第一項、第四十八条、第五十条及び第五十二条の規定は、特許権の存続期間の延長登録の出願の審査について準用する。