79条から93条までは、通常実施権について規定されています。
特許権者等が許諾する通常実施権とは別に、この範囲の条文には、
法律で定めた通常実施権(法定通常実施権)の規定と、
裁定を求めることによって通常実施権の設定を受けるための規定が書かれています。
まとめると次のとおりです。
法定通常実施権
条文 | 種類 | 対価 |
---|---|---|
35条 | 職務発明に基づく通常実施権 | × |
79条 | 先使用(先使用権) | × |
79条の2 | 特許権の移転の登録前の実施 | ○ |
80条 | 無効審判の請求登録前の実施(中用権) | ○ |
81条 | 意匠権の存続期間満了後の通常実施権 | × |
82条 | 意匠権の存続期間満了後の通常実施権 | ○ |
176条 | 再審による回復前の使用に基づく通常実施権(後用権) | × |
裁定通常実施権(協議→裁定)
条文 | 種類 |
---|---|
83条 | 不使用 |
92条 | 利用抵触関係、クロスライセンス |
93条 | 公共の利益 |
特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。
1
第七十四条第一項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録の際現にその特許権、その特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有していた者であつて、その特許権の移転の登録前に、特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
2
当該特許権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
1
次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許無効審判の請求の登録前に、特許が第百二十三条第一項各号のいずれかに規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許を無効にした場合における特許権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
- 1
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同一の発明についての二以上の特許のうち、その一を無効にした場合における原特許権者
- 2
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特許を無効にして同一の発明について正当権利者に特許をした場合における原特許権者
- 3
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前二号に掲げる場合において、特許無効審判の請求の登録の際現にその無効にした特許に係る特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者
2
当該特許権者又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
特許出願の日前又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権がその特許出願に係る特許権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その原意匠権者は、原意匠権の範囲内において、当該特許権又はその意匠権の存続期間の満了の際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
1
特許出願の日前又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権がその特許出願に係る特許権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その満了の際現にその意匠権についての専用実施権又はその意匠権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者は、原権利の範囲内において、当該特許権又はその意匠権の存続期間の満了の際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
2
当該特許権者又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。