特許法 第三章 審査 その3(特50~54)

第五十条(拒絶理由の通知)

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、
特許出願人に対し
拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。

ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。

但書、先に53条1項を確認したほうがよい。53条1項は不適法な補正がされたときについて定めているが、新規事項を追加する補正とシフト補正については49条1号にも該当する。その時は、53条1項の規定を優先的に適用することが定められている。


第五十条の二(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)

審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、
当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条
(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)及び
第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)

の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。

分割出願等の審査における審査官の通知について定めている。

当該特許出願を甲、他の特許出願を乙とすると、少なくともいずれか一方に44条2項の規定が適用されたことによって、当該特許出願と同時にされたこととなっているので、考えられるパターンは以下の3つである。

  • 甲が乙の分割出願である場合
  • 乙が甲の分割出願である場合
  • 甲と乙が、同じ特許出願に基づく分割出願である場合

第五十一条(特許査定)

審査官は、特許出願について拒絶の理由を発見しないときは、特許をすべき旨の査定をしなければならない。


第五十二条(査定の方式)

1
査定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。

2
特許庁長官は、査定があつたときは、査定の謄本を特許出願人に送達しなければならない。

査定は、特許査定・拒絶査定の両方を指す。また、謄本の送達にあった時に、査定の効力が生ずるものと考えられる。


第五十三条(補正の却下)

1
第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合
(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。

2
前項の規定による却下の決定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。

3
第一項の規定による却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

ただし、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においては、この限りでない。

17条の2第1項は、補正の時期について定めたものであり、その時期(2回目以降の拒絶理由通知がされた場合)に行われた補正にが不適法であることが、特許査定の謄本の送達前に認められた場合は、その補正を却下するものとした。審査の迅速性のためである。

なお、特許査定の謄本の送達後に2回目以降の拒絶理由通知に対する不適法な補正が行われたことが認められたときは、新規事項を追加する補正のみが無効理由となる(123条1項1号)。その他の用件は、補正の制限が審査の迅速性や出願間の公平な取扱いの観点からによるという趣旨からすると、無効にするほど実質的な瑕疵があるとは認められないため、無効理由とはされていない。


第五十四条(訴訟との関係)

1
審査において必要があると認めるときは、審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができる。

2
訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、査定が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。

審判又は訴訟手続との関係で審査を中止する場合、および、審査との関係で訴訟手続を中止する場合について規定したもの。